ブルーラジカル
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歯を抜きたくない
もう歯周病で悩み続けない
非外科的光殺菌治療
「ブルーラジカル」
- 「近頃、硬いものが噛みにくくなった気がする…」
- 「歯磨きのたびに洗面台が血で赤くなるのが当たり前になってしまった」
- 「家族からそれとなく口臭を指摘されてショックを受けた」
- 「鏡を見るたびに歯茎が痩せて、歯が長くなったように感じる…」
もし今、このようなお悩みを一つでも抱えているなら解決できる手段があります。どうかほんの少しだけ、あなたの貴重な時間をください。そのお悩みは決してあなた一人のものではありません。
そして「もう手遅れだ」「年だから仕方ない」と諦める必要はまったくないということを、まず心からお伝えしたいと思います。
日本の成人の約8割が罹患している、あるいはその予備軍であると言われる歯周病。それは痛みなどの自覚症状がほとんどないまま静かに進行し、気づいた時には人生を共に歩んできた大切な歯を支える骨を取り返しがつかないほど溶かしてしまう、非常に厄介で悲しい病気です。
これまで重度歯周病の治療は、歯茎を切開する「外科手術」が主な選択肢でした。もちろんこれは確立された効果的な治療法です。
しかし「怖い」「痛そう」「術後の腫れや生活への影響が心配」といった、患者様が抱く当然の不安から治療をためらってしまう方が多くいらっしゃったのも、また事実です。
私たち歯科医療従事者はそんな患者様の「歯を抜きたくない、でも手術は怖い」という切実で痛切な想いに、どうすれば応えられるのかをずっと考え続けてきました。そして今、私たちは自信を持って一つの答えをご提供できます。
それが厚生労働省承認の技術を用いた、「切らない」歯周病治療『ブルーラジカル』です。
なぜブルーラジカルがあなたの歯周病治療の新たな希望となり得るのか、科学的根拠と私たちの臨床経験に基づいて誠心誠意お伝えしていきます。あなたの未来の健康と、生涯にわたる笑顔にとってきっと価値のある情報になるはずです。
切らずに治す、光殺菌治療「ブルーラジカル」
歯周病治療の切り札
「基本治療では届かない、でも手術はしたくない」そんな患者様の長年のそして切実な悩みに応えるべく登場した、第3の選択肢。それが当院が自信を持って導入している光殺菌治療「ブルーラジカル」です。
これは歯周外科治療に代わる非外科的(切らない)治療法として日本の厚生労働省からその有効性と安全性が認可を受け、しっかりとした治験データもある科学的根拠に基づいた信頼性の高い治療法です。
ブルーラジカルは「何がすごいのか?」
〜細菌要塞を"内側から"破壊する圧倒的な殺菌力〜
ブルーラジカルの驚異的な殺菌力の秘密は単一の機能ではなく、「光」「薬剤」「超音波」という3つの力を完璧なタイミングとバランスで組み合わせた緻密な相乗効果にあります。
従来のクリーニングが細菌の要塞(バイオフィルム)の外壁を外からカリカリと削り取る作業だとすれば、ブルーラジカルは全く発想が異なります。
それはただ洗い流すのではなくバイオフィルムの"内側から"細菌を破壊し、無力化しそして一掃するという画期的なアプローチです。
潜入:光感受性ジェルが細菌の要塞に浸透
まず歯周ポケット内に「光感受性ジェル(医薬品である過酸化水素)」を注入します。
このジェルはその分子の小ささと特性により歯周病菌が築いた強固なバリアであるバイオフィルムの内部にスルスルと浸透していく能力を持っています。いわば敵の要塞の内部にまで到達する、優秀な「潜入部隊」です。
内部から破壊:特殊な光(レーザー)が細菌だけを狙い撃ち
次にこのジェルにだけ特異的に反応する、特殊な波長の光(レーザー)をポケット内に照射します。
この光自体に熱はなく組織を傷つけることはありません。
しかしジェルに光が当たった瞬間、化学反応が起こり強力な殺菌作用を持つ「活性酸素」が大量に発生します。
この活性酸素がバイオフィルムを内側から破壊し歯周病菌を細胞レベルで破裂させて殺菌します。
健康な歯肉組織にはほとんどダメージを与えず細菌だけを狙い撃ちできる、極めてインテリジェントな攻撃です。
一掃:超音波振動で死骸と歯石を粉砕・除去
さらに殺菌と同時に特殊な超音波振動によって破壊されたバイオフィルムの残骸や細菌の死骸、そして細菌の住処となっていた歯石を徹底的に粉砕し洗い流します。
この超音波は硬い歯石には強く作用し柔らかい歯肉には優しいという特性を持っており、組織へのダメージを抑えながら歯の根の表面をクリーンで滑らかな状態に仕上げます。
これによりこの後、歯肉が再びくっつきやすい(再付着しやすい)理想的な環境が整うのです。
患者様のメリット
〜ブルーラジカルが選ばれる理由〜
外科手術が怖い方へ | 痛みへの配慮 | |
---|---|---|
歯肉の切開や縫合が一切不要な「非外科的治療」です。手術への恐怖心が強い方、持病で外科処置が難しい方でも安心して治療の選択肢に入れることができます。 | 痛みへの配慮 | 施術は必ず局所麻酔を効かせてから行うため痛みを感じることはほとんどありません。リラックスした状態で治療を受けていただけます。 |
知覚過敏対策 | アプローチ範囲 | |
外科手術後にみられがちな侵襲による歯肉退縮が少ないため、術後の知覚過敏のリスクが低いのも大きな特長です。 | アプローチ範囲 | これまで器具が届きにくく感染源が残りやすかった、深い歯周ポケットの底の隅々まで徹底的な殺菌と清掃が可能です。 |
歯周病の進行抑制 | 歯周ポケットの改善 | |
病気の根本原因であるバイオフィルムを巣ごと破壊することで病状の悪化に強力なブレーキをかけます。 | 歯周ポケットの改善 | 治療が成功すればポケットが浅くなりご自身の歯磨きでもプラークコントロールが容易な、健康な状態を目指すことができます。 |
治療の成否は患者様との共同作業で決まります
ここでブルーラジカルを検討されているあなたに、必ず知っておいていただきたい非常に大切なことがあります。
ご注意ください:ブルーラジカルは、初診当日にすぐ行える治療ではありません
「良い治療ならすぐにやってほしい」と思われるお気持ちは痛いほど分かります。しかし効果を得るためには正しいステップを踏むことが絶対に不可欠なのです。
ブルーラジカルは私たちが一方的に施す魔法ではありません。あなたと私たちクリニックが固い信頼関係で結ばれ、同じ目標に向かって歩む「二人三脚の共同プロジェクト」なのです。
STEP 1:まずは「現在地」の正確な把握から
〜初回カウンセリング&精密検査〜
まず担当スタッフがあなたの現在のお口の状態を精密に検査し、歯周病がどこまで進行しているのかなぜそうなってしまったのかをレントゲン写真や歯周組織検査の結果といった客観的なデータをお見せしながら、時間をかけて丁寧にご説明します。
その上でブルーラジカルがどのような治療なのか、メリットだけでなくデメリットや限界も含めて詳しくお話しし、あなたが心から納得できる治療計画を一緒に立てていきます。
STEP 2:成功率を向上させるための「準備期間」
〜本気のセルフケア習得〜
ここが治療の成否を9割方決定づける、もっとも重要なステップです。
絶対条件
当院ではブルーラジカルの施術に進むための「絶対条件」として、あなたのプラークコントロールレコード(PCR)を30%以下にすることを定めています。PCRとは染め出し液でプラークを赤く染め、歯の全表面積のうち何%にプラークが付着しているかを算出する指標です。
なぜこれほど厳しくセルフケアを求めるのか?
それには極めて重要で科学的な理由があります。プラークはいわば治癒を邪魔する「お邪魔虫」です。
せっかくブルーラジカルでポケットの奥を完璧にきれいにしても入り口である歯と歯肉の境目にプラークが残っていると、そこから出る毒素が治ろうとする歯肉の細胞が歯の表面にしっかりとくっつく(再付着する)のを妨害してしまうのです。
これが私たちが「予後が悪い」と呼ぶ状態です。これではどんなに優れた治療もその効果を100%発揮することはできません。これはあなたに高いハードルを課してふるいにかけるための厳しいルールではありません。
あなたの貴重な時間と費用を絶対に無駄にしないためにそして治療を確実に成功へと導くための「必要不可欠で、もっとも効果的な準備」なのです。
「自分にできるだろうか…」と不安に思う必要はありません。
経験豊富な歯科衛生士があなたの専属コーチとなり、プロによる機械的歯面清掃(PMTC)とあなたの歯並びや癖に合わせたオーダーメイドのブラッシング指導(TBI)であなたが「30%以下」という目標を達成できるまで、何度でも根気強く情熱を持ってサポートすることをお約束します。
STEP 3:いよいよ施術当日
〜万全の準備で臨む本番〜
セルフケアの技術を習得しPCR30%以下を達成したら、いよいよ施術当日です。麻酔を効かせ痛みがないことを確認してから、丁寧に施術を進めますのでご安心ください。これはこれまでのあなたの努力を結実させる大切な日です。
STEP 4:本当の勝負はここから!「12週間のゴールデンタイム」
ブルーラジカルはレーザーを当てて終わりではありません。むしろ本当の治癒プロセスはここから始まります。治療後の12週間(約3ヶ月)はきれいになった歯の根の表面に歯肉が再びしっかりと生着(再付着)していくための、非常に重要で繊細な「ゴールデンタイム」です。
この大切な期間の治癒を後押しするため治療後3ヶ月間は原則として1ヶ月ごとにご来院いただき、お口の状態とプラークコントロールが維持できているかをチェックさせていただきます。
この3ヶ月間、PCR30%以下を維持し続けること。これが治療効果を確実なものにし長期的に安定した状態を手に入れるためのあなたとのもっとも大切なお約束です。
セルフケアで気をつけること
治療の全期間を通じてあなたがもっとも意識すべきこと。それは「歯と歯肉の境目」です。
ここが歯周ポケットへの汚れの入り口です。この入り口を習得した技術で毎日丁寧に封鎖し続けること。これが歯周病の進行と再発を防ぐ、強力な防御となるのです。
ブルーラジカルQ&A
〜あなたの「気になる」にすべてお答えします〜
ここでは患者様からよくいただくご質問について包み隠さず、誠実にお答えします。
費用はどのくらいかかりますか?なぜ保険が適用されないのですか?
まず費用の前に日本の医療保険制度について少しだけお話しさせてください。
日本の保険診療は「病気に対する治療」を誰もが安価に受けられる、世界に誇るべき素晴らしい制度です。
しかしその公平性を保つため使用できる薬剤や機器、そして一人の患者様にかけられる時間に厳しい制約があります。ブルーラジカルのように厚生労働省認可の機器と特殊な医薬品(過酸化水素)を用い、歯科医師および歯科衛生士が十分な時間を確保して精密かつ丁寧に行う治療は、残念ながらこの保険の厳格なルールの枠には収まりません。
私たちは「ルール内でできる治療」で妥協するのではなく、「今、あなたの歯と健康のためにできる科学的根拠に基づいた治療を提供したい」という強い想いからブルーラジカルを自費診療としてご提供しています。
費用について
部位 | 費用(税込) |
---|---|
前歯 | 1歯あたり ¥16,500 |
小臼歯 | 1歯あたり ¥22,000 |
大臼歯 | 1歯あたり ¥27,500 |
お支払いは治療を行った当日にその日に処置した歯の本数分を頂戴しております。
現金、各種クレジットカードのほか月々のご負担を抑えられるデンタルローンもご用意しておりますのでお気軽にご相談ください。自費診療と聞くと高額に感じるかもしれません。しかしこれは単なる「出費」ではありません。
将来、歯を失って高額なインプラントや入れ歯を入れたり歯周病が原因で引き起こされる全身疾患の治療でさらに大きな医療費と時間、そして健康を失ったりするリスクを回避するためのご自身の歯と人生の質を守る、価値のある「未来への投資」であると私たちは確信しています。
ブルーラジカルで歯周病は完全に治りますか?失った骨は元に戻りますか?
いいえ、これは非常に重要な点ですので誤解のないよう正直にお伝えします。
ブルーラジカルは歯周病の進行を食い止め状態を劇的に改善するための非常に効果的な「治療法」であり、一度かかった歯周病を完全になくしてしまう「完治」を目指すものではありません。歯周病は高血圧や糖尿病と同じように生涯にわたる管理(コントロール)が必要な慢性疾患です。
また一度溶けて失われてしまった骨や歯肉の組織を再生させて元に戻す効果もありません。
そのためすでに歯がグラグラしている(動揺歯)場合、ブルーラジカルで骨が再生して歯がガッチリと固定されるわけではありません。しかしこれ以上病状が進行するのを食い止め細菌による炎症を抑えることで歯の寿命を可能な限り延ばす「延命処置」として非常に大きな意味を持ちます。
副作用やデメリットについて、詳しく教えてください
以下の点について治療を開始する前に必ずご理解いただく必要があります。
一時的な症状
治療後数日間は治療部位に軽い痛み、うずくような感覚知覚過敏(水がしみるなど)が出ることがあります。これらは通常、痛み止めでコントロールできる範囲です。
歯肉の白濁
施術中~施術直後、過酸化水素の反応で歯肉が一時的に白っぽく見えること(白濁)があります。これは数時間~1日程度で自然に元の色に戻る正常な化学反応ですのでご安心ください。
その他の注意点
・上記の通りこれは完治や組織再生を目的とした治療ではありません。あくまで進行を食い止めご自身のケアでコントロール可能な状態に導くための治療です。
・治療の成功はあなたのセルフケアに100%依存します。
治療後のメンテナンスにご来院いただけなかったりプラークコントロールが不十分であったりする場合、期待した効果が得られず残念ながら予後不良となる可能性があります。
治療期間は、全部でどのくらいかかりますか?
患者様のお口の状態やセルフケアの習熟度によって個人差はありますが一つの目安として準備期間に1~2ヶ月、そして施術後のメンテナンス期間に3ヶ月、トータルで約半年程度を一つのプロジェクトとお考えいただくとイメージしやすいかと思います。
短期間で終わる治療ではありませんがこの半年間の頑張りがその後の10年、20年のあなたの健康を支える土台となります。
治療後のメンテナンスは、ずっと続けないといけませんか?
はい、ぜひあなたの生涯にわたる健康のパートナーとしてサポートさせてください。治療によって一度手に入れた健康な状態は残念ながら何もしなければ維持できません。歯周病は再発のリスクが常にあるからです。
しかしご自身での日々のケアと私たちプロによる定期的なチェック&クリーニングを両立させることでそのリスクを限りなく低く抑えることができます。
治療後のメンテナンスは「義務」ではなく手に入れた健康をもっとも楽に、そして効果的に「守る」ための賢い選択なのです。
院長からのメッセージ
〜あなたの10年後の笑顔のために〜
私が歯科医師として日々診療する中でもっとも心を痛める瞬間。それは重度の歯周病によって本来ならまだ十分に機能するはずだった歯を患者様にご納得いただいた上で抜歯せざるを得ないと宣告する時です。
患者様のあの何とも言えない悲しそうなそして悔しそうなお顔を見るたびに「もっと早く出会えていれば…」「何か他に方法はなかったのか…」という、言葉にならない無力感に苛まれてきました。歯を失うことはただ食事がしにくくなるだけではありません。
思いきり笑えない、好きなものを我慢する友人との会話が楽しめない、はっきりと話せない…それはその方の人生の輝きそのものを少しずつ、しかし確実に奪っていくことだと私は痛感しています。だからこそ私たちは「ブルーラジカル」という治療法に出会った時、これこそが「手術は怖い、でも歯は抜きたくない」と願う患者様を絶望から救う希望の光になると確信しました。
「切らずに治せる」「痛みが少ない」そして何より「自分の歯をまだ諦めなくていい」という大きな可能性をこの治療は秘めています。もちろん簡単な道のりではないかもしれません。
治療の成功にはあなたの「本気で治したい」という強い意志と日々の努力が不可欠です。しかしどうか思い出してください。あなたは一人ではありません。私をはじめ当院の情熱あふれる歯科衛生士、そしてスタッフ全員があなたの強力なパートナーとしてコーチとしてサポーターとして、ゴールまで全力で伴走することをお約束します。
もしあなたが今、歯周病で深く悩みご自身の未来に不安を感じているのならどうか一人で抱え込まないでください。
まずはあなたの今の気持ち、お悩み不安、そして治療への希望を私たちに聞かせていただくことから始めませんか?「話を聞くだけ」「相談だけ」でももちろん心から歓迎します。
あなたのその小さな一歩が10年後、20年後の健康で輝く笑顔へとつながるもっとも重要な扉です。



歯周病の「本当の怖さ」をご存知ですか?
〜お口の中だけの問題ではない、全身を蝕む病〜
多くの方が「歯周病=お口の病気」だと思っています。
しかしそれは歯周病という病の本質の、ほんの一面しか見ていません。
歯周病はあなたの全身の健康を静かに、しかし確実に蝕んでいく可能性を秘めた非常に危険な「慢性の感染症」なのです。
歯周病による骨の融解
歯周病の正体は歯周病菌による「感染症」です。
お口の中に存在する数百種類の細菌が歯の表面で互いに結びつき、ネバネバとした塊を形成します。これが「プラーク(歯垢)」です。
このプラークはただの汚れの塊ではありません。細菌たちが身を守るために分泌した多糖体に覆われた、「バイオフィルム」と呼ばれる強固な要塞です。非常に強力なバリア機能を持っており、うがい薬や抗生物質の飲み薬などではその内部にまで効果が届きません。この安全な要塞の中で歯周病菌は毒素を出し続け、あなたの体を静かに蝕んでいきます。
ステージ1:歯肉炎
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歯周病菌の毒素によってまず歯肉(歯茎)が炎症を起こします。 |
ステージ2:歯周炎
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歯肉炎を放置すると炎症はさらに深部へと拡大します。歯と歯肉の付着部分が破壊され始め、「歯周ポケット」という溝が形成されます。このポケットは酸素を嫌う、より悪性度の高い歯周病菌にとって格好の隠れ家となります。 |
ステージ3:骨の融解
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歯周炎が進行すると、もっとも恐ろしい事態が起こります。細菌が出す毒素や、それに対抗しようとする体の過剰な免疫反応によって歯を支える大切な「歯槽骨(しそうこつ)」が溶かされていくのです。 |
終末ステージ:抜歯 ― 失ってから気づく、歯の価値
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骨の破壊がさらに進むと歯は支えを完全に失い、グラグラと揺れ始めます。食事の際に痛みを感じたり、自然に抜け落ちたり、あるいは保存不可能と判断され抜歯に至ります。 |
歯周病菌は血流に乗って全身を駆け巡る
「見えないテロリスト」
歯周病の本当の怖さは歯を失うことだけではありません。
炎症を起こし常にじわじわと出血している歯周ポケットは、いわば「体中に開いた、無数の傷口」です。
そこから歯周病菌そのものや、菌が産生する「LPS(リポ多糖)」という強力な内毒素がいとも簡単に血管内に侵入し、血流に乗って全身へと運ばれてしまうのです。
これらは「見えないテロリスト」のようにあなたの体の至る所で新たな炎症(火事)を引き起こし、深刻な全身疾患の引き金になったり既存の病気を悪化させたりすることが、近年の膨大な研究によってもはや疑いのない事実として確立されています。
糖尿病との「負の連鎖」
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歯周病は糖尿病の「第6の合併症」と公に位置づけられています。 |
心筋梗塞・脳梗塞 ― 血管を詰まらせる"静かな殺し屋"
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血管内に侵入した歯周病菌やLPSは血管の壁に付着して炎症を起こし、動脈硬化を促進する「アテローム性プラーク」の形成を促します。 |
誤嚥(ごえん)性肺炎 ― 高齢者の命を奪う原因の一つ
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特にご高齢の方や寝たきりの方にとって誤嚥性肺炎は命を直接脅かす深刻な病気です。食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまう際にお口の中にうようよと存在する歯周病菌が一緒に肺へ流れ込み、重篤な肺炎を引き起こします。 |
アルツハイマー型認知症との関連
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研究ではアルツハイマー型認知症で亡くなった方の脳から、歯周病の代表的な菌である「Pg菌」やその毒素が多数発見されています。 |
妊婦さんと、生まれてくる赤ちゃんへの影響
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妊娠中の女性が歯周病にかかっていると血中の炎症性物質が増加します。これが子宮の収縮を促し早産や低体重児出産のリスクが、実に7倍にも高まるという衝撃的な報告があります。 |
これまでの歯周病治療と
その「壁」
〜なぜあなたの歯周病は治らなかったのか〜
歯周病の本当の怖さをご理解いただいたところで次に、従来の治療法についてお話しします。
これらの治療法も非常に重要であり歯周病治療の根幹をなすものです。しかしそこにはいくつかの越えがたい「壁」が存在していました。
すべての土台:「歯周基本治療(SRP)」とその限界
すべての歯周病治療はこの基本治療から始まります。歯科衛生士が「スケーラー」と呼ばれる専用の器具を使い、歯の表面や歯周ポケットの浅い部分に付着したプラークや歯石を徹底的に除去(スケーリング・ルートプレーニング)します。
これは歯周病治療において絶対に欠かすことのできない、もっとも重要な治療です。しかし歯周病が進行し、歯周ポケットが5mm、6mm…と深くなってしまった場合、この基本治療だけでは限界が見えてきます。
歯の根の形は私たちが想像するよりもずっと複雑です。湾曲していたり凹んでいたり、分岐していたりします。
深いポケットの底にあるそんな複雑な形態にこびりついた歯石やバイオフィルムを、術者の指先の感覚だけを頼りに手探りで完全に除去するのはどんなに熟練した腕の良い歯科衛生士であっても至難の業です。
わずかでも感染源を取り残してしまえばそこからまた病状は静かに進行してしまうのです。
進行した場合の治療:「歯周外科治療(フラップ手術)」
基本治療で改善が見られない場合、次の選択肢となるのが歯周外科治療です。これは麻酔をした上で歯肉を切開し、骨からめくり上げることで歯の根を直接目で見て確認しながら徹底的にプラークや歯石を除去する手術です。
感染源を直視下で除去できるため非常に効果の高い、確立された治療法です。しかし患者様にとっては、いくつかの大きなハードルがありました。
身体的・心理的な負担
「歯茎を切る」「骨を削ることもある」「縫合する」といった外科的な処置に対して強い恐怖や抵抗感を抱くのは当然のことです。術後には痛みや腫れ、出血などを伴うことがあり術後の食事や清掃にも気を遣う必要があります。
治癒期間と生活への影響
抜糸や消毒のために複数回の通院が必要で歯肉が完全に治癒するまでには時間がかかります。その間、日常生活にも少なからず影響が出ることがあります。
術後の変化
治癒の過程で歯肉が下がり歯が長く見えたり(歯肉退縮)、冷たいものがしみる知覚過敏が起きやすくなったりすることがあります。
これらの「壁」によって「治療が必要なのは分かっているけれど、怖くて一歩を踏み出せない…」そんなジレンマを抱える患者様を私たちは数えきれないほど見てきました。